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南文堂の

ラスカル☆ミーナ的魔法講座

文:南文堂





第1回最終回 ミーナの魔法について


「皆さんこんにちは! アシスタントの神埼芽衣美だよ♪ 今日は突然だけど、ラスカル☆ミーナの魔法についての集中講座だよ。退屈だけど、最後まで聞いてね♪」
「芽衣美ちゃん。のっけから退屈だなんていったら、お客さん帰っちゃうよ。最後まで騙し通さないとダメだよ。あ、申し遅れました、同じく、アシスタントの銀鱗です」
「ごめんね、リン君。講師が講師だったから、つい言っちゃった」
「まあ、その気持ちわからなくもないけどね」
「でもさ、こういうのって、普通は作中でやらないの?」
「うーん、普通はそうするんだけど、普通じゃないから、僕たち書いている人」
「困ったチャンだね」
「それと、説明する人がいないらしんだよ、これが」
「なんで? 琉璃香さんとか真琴さんとか魔法のエキスパートでしょう?」
「うん。そうだよ。だけど、あのお二方が、そんな面倒な事をいちいち解説すると思う?」
「……しないと思う」
「そうなると誰も説明できないんだね、これが」
「リン君やウッちゃんは?」
「僕らはある程度はわかっているけど、ちゃんと説明するにはちょっと力不足。これはご主人様にも言える事なんだけどね。リリーは……たぶん、ほとんどわかってないと思う」
「ウッちゃんも大変だね」
「その点は同情するよ」
「……あの〜」
「あっ! 呼ぶまで出て来たらダメって言ったじゃない!」
「だって、いつまでたっても呼んでくれないし、このまま二人の雑談でおしまいって事になるかと不安で不安で……」
「そ、そんなことないわよねー、リン君」
「そ、そうだよねー、芽衣美ちゃん」
「……」
「というわけで、特別講師の南文堂さんです」
(ぱちぱちぱんち)
「えーと、講師の“みなふみどう”です」
「なんで、ひらがな?」
「たぶん、これで、『ええ! “なんぶんどう”じゃなかったのかよ!』と思う人が何人かいるはずですから。見えないながらもその反応を楽しむためです」
「相変わらず、悪趣味だね」
「仕方ないよ、病気だから」
「えらい言われようだな。そんな奴から生まれたキャラなのに」
「「それがあたしたち最大の不幸!」」
「ハモらなくたっていいのに……」
「ところで、質問!」
「何かな、芽衣美ちゃん?」
「南文堂さんはどうして、似合わない黒のサングラスと、怪我もしてないのに杖をついているんですか?」
「こういう講座を開く時はお約束だよ。それから、講座の間は、私の事は『コーチ』と呼べ」
「じゃあ、次は女装だね♪ レオタード、れおたーど♪ お姉さま♪」
「……一回で終わらせる」
「そうしてください。読者を代表してお願いします」
「まあ、それじゃあ、とっとと、魔法講座を始めようか? 容量かさばるし」
「あ、そうだった。それでは、よろしくお願いしますっ」
「はい。それじゃあ、先ずは、魔法の前に物質について説明するね。物質は全て波である」
「いきなり量子論、ド・ブロイ波ですか?」
「どぶろくは?」
「お酒を作ってどうする? ド・ブロイ波。別名、物質波とも呼ばれている。今から百年ほど前に光は粒子か波かで論争があってね」
「どっちだったの?」
「両方」
「なんか、それって、詐欺みたい」
「まあ、そう思った人も沢山いて、色々とそれを否定する実験を行ったんだけど、結局は誰もそれが間違っていることを証明できなかったんだよ、少なくとも現在まではね。
 まあ、それはさて置き、それならば、運動する粒子もまた波でないかと言うことを思い浮かんだ人がいて、その人がルイス・ビクター・ド・ブロイ。二十世紀初頭のフランスの物理学者だよ。そうして粒子の運動量から波長を求めて、エネルギーから振動数を求める式を作ったんだよ。それがド・ブロイ波。これに当てはまれば走っている車すら波と言えるんだよ」
「へー、だから、物質は全て波って言ったんだね」
「それがちょっと違う。この物質波は元々、古典物理学と量子論の橋渡し的な役割を果たしているもので、私の言う『波』とは少し異なるんだよ」
「それなら説明しないでくださいよ。ややこしい」
「物質波を知っている人は混同するとややこしくなるからね、違うものと言うのを話すためにあえて説明したんだ」
「じゃあ、その『波』って言うのは?」
「物質の基本は一本の弦で、それを振動させて、その振動の波形、振幅、波長、振動数なんかでその物質の特性を示しているんだ。つまり、『波』というわけだ」
「うん?」
「物質の基本、その弦は混沌の海に浮かんでいる。これが世界の姿というのが、1952年にワインバーグが提唱した弦振動モデルのあらまかな説明だ」
「なんだか、わかんないよ」
「うーん、海を思い浮かべて、その水面に身体をくねらせて蛇が泳いでいる。身体のくねらせ方で蛇の種類が判別できると言うことだよ」
「……(想像中)……うう、なんか気持ち悪い」
「あまりいい例えが思い浮かばなくて、ごめんね。さあ、その蛇が体をくねらせるとどうなる?」
「はいはいはーい! 前に進む!」
「じゃなくって――」
「波が立つ。ですね?」
「リン君、正解。その混沌の海に立った波は別の弦に当たって弦の振動を変化させる。これが物質の作用になるんだね」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。それだったら、その変化した弦も波を立ててるから、逆もあるんじゃないんですか?」
「いいところに気がついたね。その通り。実際の世界でも作用を及ぼしたものに反作用の力がかかるのと同じだよ。弦と弦の間にはお互いの発した波が干渉しあって、その間に定常波を作る。この定常波が弦の振動を変質させる。我々の目に写る物質同士の相互作用の正体だよ。ワインバーグの弦振動理論をスウェーデンの物理学者、マクレーが展開して、それを方程式化した。マクレー方程式とも相互作用波動方程式とも呼ばれているね。式は偏微分方程式で難しいので割愛するね」
「つまり、弦の振動が変質したら特性――例えば、形とかが変形した事を表すことになるんですね」
「そういうことになるね」
「二つに割れちゃったら?」
「弦を二つに切れば問題ない。無数に割れてもその分だけ切れれば個々として混沌の海に浮かんでいられる。この理論で核分裂、核融合、反物質との対消滅――質量イコールエネルギーを説明することができるんだけど、それは本当にややこしいし、それこそ説明の必要ないから今回はパス」
「えー! さっきから、割愛とかパスとか本当は説明できないんでしょう?」
「……一本の弦は本来、無数の弦の集合体でその弦同士の相互作用が極めて近い範囲で起こる力、弱い力や強い力などは弦の特殊な振動によって示されるため混沌の海では到達距離がきわめて小さい。特殊な振動を伝えるためと、範囲が極めて小さいことから、その相互作用の定常波が弦に見えなくもなくなる。混沌の海もまた最低基底状態――エネルギーが0――の無数の弦が寄り集まった物であると言える。量子論の言うところの粒子性と波動性を二面性を表している。反物質は通常物質との位相が反転しているために、お互いに干渉によって発生する定常波を発生しない。このことがお互いの弦と弦が0距離まで接近することになり、弦全体は反転した位相だが、強い力の定常波は位相が同じために、通常なら弦同士の相互作用でそれらが相互作用する範囲まで近寄らない強い力同士が振動増幅して、弦を維持する振動を超えさせてしまい、全てを素粒子へと分解し、エネルギーとして全てを放出する……」
「ス、ストーップ! ちょ、ちょっと、もういいよ! 全然わかんないよ!」
「説明して欲しいんだろう? これからいいところなのに……」
「うう、なんか嬉々としている」
「当たり前だ。滅多に披露できない一所懸命勉強した知識を披露できる場所を獲て、嬉々としないでどうする。さあ、続きを――」
「またの機会にしてください。これは魔法講座ですから物理講座ではありません」
「うう、残念。えーと……」
「72ページの3行目からだよ」
「ありがとう……って、その冗談、別ので使ったよ」
「え? ああ! 本当だ! 最近忙しくて文庫に目を通しておかなかったから! 神埼芽衣美一生の不覚!」
「自分の書いている作者の作品ぐらい読んでよ」
「だって、他の人のほうが面白そうだったんだもん」
「あの、お願いですから、先に進んでください。――我々の目に写る物質同士の相互作用の正体だよって言うところまでです」
「そう。つまり、この物質同士の相互作用を起こさせる定常波こそが、我々の世界の物理現象を表している。波を読み取るための翻訳機――言語と言った方がいいかな?――それが物理法則と言うわけだ。我々は物理法則を無視できないのは、物理法則を無視した波が出来ても、それは弦に影響を及ぼさないため、我々には扱えないんだよ」
「じゃあ、英語の全くわからない人が、英語交じりで話し掛けられても日本語の部分しか理解できないみたいなもの?」
「それに近いね。物理法則を無視したものが、弦に影響を及ぼさないよい例としては、超光速の存在だね。アインシュタインの特殊相対性理論は実は超光速の存在を禁止はしていないだよ。禁止しているのは、超光速で情報を伝達することなんだよ。つまり、情報=弦への影響ってこと」
「ふーん。そうなんだ」
「さて、やっと、魔法の原理だけど、魔法は波の干渉を使って行うんだよ。全ての物質は自分の波を直接見ることが出来ないんだ。ましてや弦の振動なんてのはね。相手の波と干渉を起こして定常波を感じて、はじめて自分の状態を知ることができるんだよ。さっき、言った『情報=弦への影響』だね。量子論で言う観測が状態を決定すると言うのは、弦への影響――干渉のことなんだよ」
「単純に言うと、干渉によって対象物の状態を変化させてしまうってことですね」
「その通り。先ずは自分の波を変化させるために自分の弦の振動を変質させる」
「それじゃあ、自分が変わってしまわないの?」
「多少はね。だけど、自分自身に影響が最小限になるように調節はするからほとんど問題はない。自分の実力以上の効果を求めれば別だけどね」
「でも、自分の弦の振動を変質する元はどこにあるの?」
「それが魔力と言うものだよ。混沌の海は物理法則に沿わない色々な波を含んでいるって、さっき言ったよね? それを汲み取って、変換して振動を変質させる波にして使う」
「そんなのあり?」
「魔法の基本的技術だよ。フルネル振動変換、普通は単に振動変換といわれている。フルネルはそれまでの魔法を科学的に解析したことから、『現代魔法の父』と言われる事もある。ハイゼンベルクの不確定性原理で言うところの量子的な揺らぎの正体は、無意識でのフルネル振動変換のせいだよ。まあ、そんな風にして自分自身の波を対象物の波にぶつけて弦の振動を変質させる。これが魔法の第一段階というわけだ」
「第一段階?」
「そう。通常の物理的作用による振動の変質だと問題ないんだけど、魔法を使ったために、このままだと少し具合が悪いんだよ。ある意味、無理矢理に変質させているよね、魔法だと」
「うん、かなり」

エネルギー準位曲線 「本来あるべき姿から変質している分だけ状態が不安定になっているんだ。図1を見てくれるかな? 本来の姿、例として橋本―バニーはしもとを上げるけど、図は横軸が状態。縦軸がエネルギーレベル(上に行くほど不安定)を表しているんだ。橋本の姿はAの場所で安定していた。それをバニーはしもとにした事によって、Bの場所まで移動してしまった。Bの場所も一応谷になって安定しているけども、変身すると言うことはその山を越えるエネルギーが必要になるわけだね。ということは、逆にも行ける。元にも戻れることになる。山を越えないエネルギーで変身させることも可能だけど、えーと、確か……カール式固定化法とかいう方法で、それは存在確率――トンネル効果を利用するから失敗の可能性が付きまとうし、パワーのコントロールが微妙で難しいから、ほとんど使われない。使う場合はあと少し魔法力が足りないから一八勝負で使うぐらいだな」
「じゃあ、どうするの?」
「通常の変質であるならば、余剰エネルギーは変質させた側が吸収、つまり、変質して安定する。しかし、魔法のように大量の余剰エネルギーを術者が吸収してしまっては術者への影響が甚大になってしまう。増幅など一時的に干渉力を上げている場合など、それがまるっきり返って来れば、まず、ただではすまないね。余剰エネルギーのはけ口、それが魔法の安定化技術、世界層の融合となるんだよ」
「せかいそう?」
「世界は一つでなく、幾つもあるんだよ。何層にも重なっている透明のフィルムに絵をかいて、重ねている状態とよく似ているね。ただし、絵はそれぞれフィルム一枚ごとに1色で描かれてあって、我々はある一つの色しか見えないとすれば、一枚の分厚い透明フィルムに一つの絵が描いているようにしか見えないだろう?」
「うん」
「その世界層の中で対象物の変質後の振動と同じ世界層――今の場合だったら、バニーはしもとの存在する世界層を見つけ――これは共鳴によりすぐに見つかる――、余剰エネルギーを使って、その世界層と橋本のいる、つまり、我々のいる世界層の一部融合させる。こうやって、余剰エネルギーを消費するんだ。
 これを世界層融合、正確にはヤン―ファインマン型世界層融合法という」
「それって……」
「さっきの例を使えば、見えない色を見えるようにフィルターをかますって感じかな? 余剰エネルギーと世界層の共通点(同じ振動)があるから可能となる技術だよ。その世界層の一部融合すると、バニーはしもと(B)層での振動が、橋本(A)層での物質の振動に影響を与えて、一部融合した範囲の、つまり、バニー橋本を中心とした周囲の弦の振動が励起状態になるんだよ。ミーナの連鎖的変身魔法はその励起した状態を利用して、何らかのきっかけを与えて、変身させる魔法なんだよ」
「知らなかった。それじゃあ、世界をバニーさんで埋めるのは無理って事?」
「不可能ではないが、現実に可能と言えない。全世界を融合するのに必要なエネルギーを供給できるかどうかのミーナの力量次第だからね」
「なんで? そこでミーナお姉ちゃんが出てくるの?」
「連鎖的変身魔法の場合、状態的にはレーザーに似た状態になるんだ。
 レーザーはレーザー媒質が励起状態にされて、そこに光が当たって、光を吐き出して、基底状態に戻る。そこにまたエネルギーが注がれて、基底状態から励起状態に引き上げられる。これの繰り返しだからね」
「ふーん。そうなんだ。だけど、普通はレーザーの仕組みは知らないよ」
「うっ。結構、メジャーな技術なんだけど……。まあ、世界層融合の維持、つまり励起状態に保つために常に魔法力を注がなければならないわけなんだ。魔法力の供給、分配、消費の補給ラインが必要となるんだ。ミーナは第1話では自分自身でその供給を、バニー橋本に分配を任せていたが、第2話以降では供給と分配も変身キャラに任せている。第1話で魔力が尽きるのが早かったのは、供給を自分でしていたせいなんだよ。第2話以降で改良したのは、手抜きと言われないようにするため努力したのだろうね」
「真面目な美奈子おねえちゃんらしいけど、なんか暗黒魔法少女らしくないね。努力する悪い魔法少女って」
「まあ、仕方ないね。真面目な悪って強いから、ますます負けにくくなっていること、わかってるのか聞きたいけど、気が付かれたら面白くないから黙っておこう。
 話を元に戻すけど、第6話ではやたらとミーナが疲れているのは、供給はミーナ、分配が煙幕だったために魔法力の消費量が大きかったんだよ。第1話と同じ状態だね。しかも、『雷鞭』も相当、魔法力を消費するのだから尚更だろうね。
 集中力低下や体調不良による影響は基本的にコントロールの失敗だけで、魔法の供給補給能力や容量には変わらないんだよ。リリーによって負担になっていた魔法を二つ相殺してくれたおかげで、体力のある程度の回復と、美奈子の姿に戻ることに魔法力を回すことが出来たわけだ。そうじゃなかったら、チアノーゼまで起こした人間が数分後に立ち上がるなんて結構、無茶だからね」
「第1話と同じ状況なのに効果が派手なのは、制御に失敗して暴走しているのと僕、使い魔を獲て、レベルアップしたからだね」
「そういうこと」
「ねえ、南文堂さん。さっきから、制御とか、供給補給力とか、容量とか何の事?」
「そう言えば、それの説明をしていなかったね。魔法力は基本的に何処にもあるもので、術者はそれを集めて魔法を使うんだよ。川の水を汲んで使うような感じ」
「それがさっき言ってた、混沌の海から波を集めるっていうのね」
「芽衣美ちゃんは頭がいいね。その通り。したがって、魔法補給力は水を汲む上手さと言うことなんだよ。魔法容量は汲んだ水を溜めておくバケツの大きさ。魔法制御力はそれを使う効率――花壇の水をやるのにバケツでまき散らすよりはジョウロを使ってまいたほうが偏りなく、少ない水の量でまける――、応用力となるんだよ。これが魔法の三大能力値と言われているんだ」
「うん、なんとなく、わかった」
「だけど、魔法補給力は個人差がほとんどないんだよ。老若男女、賢さとかも関係ないんだよ。だから、あんまり話に上ることはないんだよ。個人差があるのは魔法容量、魔法制御力の二つで、一般的にはこの二つがよく話題に上るんだ」
「へえ、そうなんだ」
「でも、魔法制御力が実用レベルである人間はほとんど皆無なんだ。だから、普通の人は魔法が使えないように思われているんだ。制御力はある程度は訓練でどうにかなるんだけど、訓練は過酷だからね」
「どういうの? 難しいの?」
「方法はいたって簡単。魔法を掛けられるのに耐える。ただそれだけ」
「へ?」
「まあ、意外かもしれないけど、魔法の基本は自分の振動の変質。自分の振動をよく理解していれば別に難しくない。魔法に耐えると言うのは魔法に対して魔法で返して波を相殺していることなんだよ。第1話での和久君と琉璃香さんの対峙もいわば魔法の応酬だったんだよ」
「なんか、後付けっぽい」
「う、うるさいな! で、皆瀬和久はある意味、英才教育を受けた魔法使いと言えるんだよ。もっとも、琉璃香さんの血のおかげで、最初から魔法制御力が高いんだけどね。それで、この魔法制御力が高いと様々な現象をコントロールする事が出来るようになる。つまり、イメージ通りに魔法を使う事が出来るってこと」
「普通はそうじゃないの?」
「魔法少女ものや何かでは、結構、魔法のアイテムを使っているだろ? 魔法制御力が高ければ魔法のアイテムに頼ることなく様々な魔法を使いこなすことができるんだよ。リリーは制御力が低いから、バトンのほかに色々と道具を使っているだろう?」
「そういえば……だけど、それなら、ミーナおねえちゃんも――」
「ミーナのバトンは魔法のアイテムと言うよりは、ミーナの魔法のイメージをより具体的にするための補助的道具で、魔法的要素は高くないんだよ。あのバトンの唯一といっていい魔法的要素は美奈子をミーナに変身させるだけかな?」
「でも、真琴様は可愛い女の子が見れる機能をつけたって」
「可愛い女の子を見れる機能は今はもうついていないんだよ」
「JAROに訴えられるよ、そんなの!」
「今は。そう言ったじゃろ?」
「……(じとっ)……」
「…………さ、最初の一回。バニーはしもとの時には機能したからね。別に使用回数を無限と言っていないんだから、詐欺じゃない」
「でも、黒に近い灰色ですね、それ」
「そう思われるかもしれないが、あの台詞が一種の魔法で、一回そういう現象を見てしまったミーナはあの台詞を信じてしまって、そのミーナがそれ振るえば、あの通りになる。無意識への刷り込みだね」
「美奈子お姉ちゃんって単純……」
「相手は稀代の大魔法使いだからね。それは酷ってもんだよ、芽衣美ちゃん。ちなみに、TS変身は変質をスムーズに行うために『なりたいなと思っているものになる』ようになっているんだよ。多々ある、なりたいなと思っているものの中で可愛い女の子にベクトルを向けているのはミーナだけどね」
「じゃあ、一ノ宮中学の生徒って……」
「ああ、それは違うよ、芽衣美ちゃん。最初の一人が変身して世界層の融合が行われるんだ。その世界層はある意味、その存在がもっとも好ましい世界だから、後から変身する人はそれに影響されてしまうんだ。嫌がっているか喜んでいるかは微妙だね」
「うーん、なんとなく、喜んでいるような気がするのは僕の気のせいかな?」
「個人の趣味にとやかく口を挟むのは、いい趣味とはいえないよ、リン君。話を戻すが、さっき言ったリリーが魔法のアイテムを使うのはおもちゃ屋の陰謀ではなく、アイテムを使う事によって魔法の効率を上げているのはわかったね? アイテムを使うと制御力が低くても容量があれば誰でも使えるけど、その分、自由度は小さくなる」
「なんだか、専用機と汎用機みたいだね」
「そんな感じだね。魔法に幅がない分だけ不利だけど、上手く使えば専用機の強みがある。要は魔法と頭は使いようってことかな?」
「じゃあ、当分、リリーおねえちゃんの勝利はないよね、リン君?」
「そうだね♪」
「……リリーが聞いたら激怒するだろうな。でも、事実だから仕方ないか。ええと、最後に魔法容量だけど、これは常人でも大小あるんだよ。第3話でリン君を使い魔にするまでのミーナの魔法容量は中の上ぐらいだったんだよ。余談だけど、魔法容量だけ比べるとセーラー錦織の方が、その時点でのミーナの容量よりも大きかったんだよ」
「なんだか、情けないね、それ」
「でも、お役に立っているんだから、嬉しいね」
「そうだね」
「……(ミーナが負けたがっていること忘れてるんじゃないか、この二人?)魔法容量が大きいと、魔法力を使う効率が悪くても魔法力が底をつきにくいって言う利点があるんだよ。制御力さえあれば大技が使用できる可能性がある。大きくても邪魔にならないけど、やっぱり、それを使えて何ぼと言うところはあるね」
「ところで、一番魔法容量があるのは?」
「リリー。魔法容量はだんとつトップ。制御力はミーナの方がはるかに上だけどね」
「ふーん、そうなんだ。そう言えば、さっき、リン君を使い魔にするまではとか言ってたけど? あれは?」
「それは僕から説明するよ。使い魔は契約すると、その主人に自分の能力の一部を提供するんだ。ウッテンバーガーハイトは制御系。僕は容量系の使い魔なんだ。本来、使い魔は外付け拡張機能みたいなものなんだよ」
「能力の一部を提供って、見返りとかはあるの?」
「見返り? うーん、そうだね。僕達、使い魔は魔法界では単独で生きていけるけど、こっちの世界では単独では生きていけないんだよ。だから、最初に拾われた時、僕、すごく弱ってただろ? だから、ご主人様は僕達、使い魔の命綱なんだよ。だから、絶対服従」
「してないよ」
「猫だもん。仕方ないね」
「リン君たら、開き直って。美奈子お姉ちゃんも苦労するね」
「あー、ちみたちだけで勝手に盛り上がらないように。ちなみに、リリーの魔法アイテムのほとんどはウッちゃんのお手製だ。もちろん、あの魔法服もウッちゃんの手縫いだ」
「ええ! あの不器用そうな指で針仕事?!」
「不器用? あ、そうか。まだ人間形態を出していなかったけど、人型も取れるよ。ウッちゃんは制御系だからね」
「へえ、そうなんだ。リン君見たことある? どんな感じ?」
「……そうだ、あいつは……それを……ぜったい、仕返ししてやる!」
「な、なんだか、リン君、黒い炎がめらめらしてる」
「まあ、二人は過去知り合いだったからね。色々あったんでしょう。気が向いたら、外伝だしても面白いかもね」
「また、そんな事言ってる。リリーの外伝とか言ってたのに」
「本伝のほうも待っていてくれている人がいるのに」
「うっ。まあ、いずれって話だから。おっと、魔法についてもあらかた話し終わったし、これにて、ラスカル☆ミーナ的魔法講座を終わらせていただきます。それではみなさん、またどこかで〜」
「ああ! 勝手に終わってる! アシスタントの神埼芽衣美でした。みんな、これからも応援してね♪」
「待ってよ、芽衣美ちゃん! 同じくアシスタントの銀鱗でした」

おしまい





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