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品質には万全を尽くしておりますが、希に体質に合われて笑い出される方もございますので、公共の場での読書はお控えください



前回までのあらすじ
存在自体がトラブルメーカー、皆瀬和久は自分の通っていた学校に白瀬美奈子として転校することになった。そして、転校初日にも関わらず、悪の魔法少女ラスカル・ミーナとなり、セーラー錦織とブレザー浜崎を対決させ、学校をパニックに陥れた。しかし、そこに現れた正義の魔法少女、ファンシー・リリーの計算された行動によってその騒ぎを収められたのであった。
さて、今回、ラスカル・ミーナはどんな騒ぎを起こすのやら……
(本編とは若干異なる点もございますので、前作をお読みになられることをお勧めいたします)


魔法少女 ラスカル・ミーナ

作:南文堂


絵師:もぐたん さん




第3話前編 新生!ねこみみむしゅめ

 堤防の上、舗装された道を美奈子たちはきゃいきゃいとおしゃべりを楽しみながら歩いていた。5月の薫風が心地よく吹くこの道は、帰るには少し遠回りにはなるが美奈子は和久の頃から気に入ってよく使っていた。
(こうしていると女の子もまんざら悪くはないなと思うのが、ちょっと怖いな)
 美奈子はふと、そう思って、ちょっと苦笑いを浮かべた。
「どうかなされました?」
 美奈子の表情の変化に気がついて庸子が怪訝な表情で尋ねた。
「ううん、なんでも……?」
 そういいかけて美奈子は川のほうに視線を向けた。
「どうかしたの?」
 美奈子の視線を追うようにして美穂たちは川のほうを見た。がしかし、そこには緑のじゅうたんを敷き詰めたように青草の茂る河川敷公園が広がり、犬を散歩させている人やマウンテンバイクの練習をしている少年、写生をしている人などがいるだけでの、何の変哲も無い風景が広がっているだけあった。
「女の子が泣いてる」
 風の中に微かに聞こえる声を聞き分けて美奈子が呟いた。
「空耳じゃありません?何も聞こえませんわ」
 美奈子は庸子のその言葉に耳を貸さずに堤防の土手を一気に駆け下り、河川公園を横切って川縁まで辿り着くとあたりを見渡した。
 美奈子のいるところから十数メートル上流側のところで一人女の子が身の丈以上の棒を振って川の水面を叩いていた。
「どうしたの?」
 美奈子が近づくとその、10歳ぐらいのショートカットが活発そうな可愛い少女が、普段はしっかりしている印象を受けるだろう瞳を、今は気弱な涙を一杯に溜めて、美奈子の方に向けた。
「ネコが!ネコちゃんが溺れちゃう!お願い、お姉ちゃん、助けてあげて!」
 棒を放り出して川を指差しながらその少女は美奈子にしがみついてきた。
 指差す方を美奈子が見るとそこから少し上流を短い丸太にしがみついて流されている黒い塊を見つけた。
(魔法を使えば簡単だけど……)
 美奈子がそう思って振り返った丁度その時に、一人土手を駆け下りた彼女の後を追って庸子たちが二人のところにやってきた。
「突然、どうなされたん、です。びっくり、しますわ」
 少し息を弾ませながら庸子は美奈子の側にやってきた。
「ごめん!これ持ってて」
 美奈子はブレザーを脱いでカバンごと庸子に渡すと靴を脱ぎ捨て裸足になり、スカートの裾を絞って縛ると太ももをあらわにし、迷わず川の中に入った。
「み、美奈子ちゃん!」
 美奈子の突然の行動に庸子たちは目を丸くして、驚きの声をあげる以外に何も出来なかった。
(つ、冷たい!それに滑る!)
 冬服では汗ばむ陽気といえどもまだ5月、水遊びするには早すぎる季節である。刺すような水の冷たさが頭の芯を痺れさせた。
 美奈子、いや和久にとって、ここは小さいときに何度も遊んだ場所であったので、水深がさほど深くないことはわかっていたが、慎重に進まなければ不安定な石ころの川底に足を取られかねない。しかも、その石ころの上に生えた藻のぬるりとした嫌な感触を感じるたびに水の冷たさとは別に鳥肌が立った。
 水の冷たさによる感覚麻痺と不安定な足場とが美奈子の歩みを遅くし、流されているネコを確保できるかどうかは微妙であった。
(くっ、間に合わないか?)
 美奈子は魔法を使おうかと真剣に考えたが、できるところまで頑張ろうと、また一歩踏み出した。その踏み出した足を乗せた川底の石が転がり、美奈子はバランスを崩した。
「み、美奈ちゃん!」
 悲鳴に近い恵子の叫びが上がったが、何とか転ばずに美奈子はよろめきながら数歩進み、体勢を立て直し、皮肉にもそのおかげで、なんとかネコまであと少しと言うところまで近づけた。
「よし!」
 美奈子はネコを助け上げようと腕を伸ばしたが、その直前でネコを乗せた丸太は気紛れに方向を変えて彼女の指先を掠めてすり抜けていった。
 美奈子は飛びついてそれを掴もうとしたが、後ろから自分の名前を叫ぶ声が聞こえ、川岸を振り返った。
「美奈子ちゃん!これ」
 美穂が魚釣り用のタモを大きく振って美奈子に投げて寄越した。
 美奈子はそれを受け取るとその有効範囲からも逃れようとしているネコを乗せた丸太に向かってタモを振った。
 と、丁度その時であった。
「動物愛護は世界を救う!生物、皆、生き物!愛があれば、種族の垣根は踏んで跨いで倒して押し込む!愛と勇気と平等の魔法・美・少女、ファンシー・リリー!ここに登場!」
 美奈子たちから少し下流にかかっている橋の欄干に若草色と水色の派手なコスチュームに身を包んだ少女が仁王立ちに立っていた。しかも、しっかりと欄干から落ちないように、沈みかけの船の船長よろしく、ロープで街灯のポールに体を巻き付けている。
(何で、アイツがここにいるんだ!)
「勇気ある、あなた!あたしが来たからもう安心よ!その猫はあたし、ファンシー・リリーが助けてあげる!」
 大威張りで胸を張ってリリーは猫の救助を引き受けたが、もう既にネコは美奈子がタモで掬い上げて救助に成功していた。
「もう大丈夫ですから!結構です!」
 美奈子はリリーの後先考えない行動が炸裂するのを恐れて大声で救助を断った。しかし、そんな言葉がリリーの耳に届くわけが無いのもなんとなく美奈子にはわかっていた。
 そして、その通りになった。
「史上最高の魔法少女、ファンシー・リリーにお任せよ!」
 予想通りの展開に美奈子の血は川の水よりも冷たくなった。魔法少女の姿でなら何とか耐えられても生身では病院送り必至である。いや、必死かも知れない。
 美奈子は急いで川から上がろうとしたが、ここまで来るのに苦労したものが、帰る時には楽になるなんて宇宙戦艦ヤ○トのようなことはあるはずも無い。焦れば焦るほど前にはなかなか進めない。
「成せばなるナセルはアラブの大統領!究極魔法!アスワンハイダムはナイルの玉に傷!」
 エジプトの電力供給に多大な貢献をしているなどを無視したネーミングの魔法をリリーが叫ぶと同時に川の水が堰き止められた。美奈子のいる位置から下流が。
 全国的に知られていない川とはいえ、腐っても市民生活を支える川の水。毎分押し寄せる水の量は半端ではない。それを塞き止められれば一気に水かさが増えるのは当然のことだった。
 美奈子はあっという間に腰辺りまで増えた水かさに歩くのを諦め、水に飛び込み、川の流れに乗りながら下流の岸へと辿り着くことにした。
「リ、リリー。何だかまずいよ、これ!」
 既に大人の身の丈ほどにまで増えた水かさにリリーの相棒、ぬいぐるみ犬のウッちゃんが白い顔を青くしてリリーの裾を引っ張った。
「う、うん。そ、そうね」
 さすがにまずいと思ったのだろう、リリーもかなり顔が強張っていた。
「魔法解除!」
 美奈子が何とか下流の岸に辿り着いて這い上がった直後だったが、そんなことも気にせずにリリーは一気に魔法を解除した。
「リ、リリー!」
 溜められた水が一気に開放されたらどうなるか。当然の結果を呼び込んだ。
「な、なに、これ!」
「鉄砲水だよ。どっちかと言うと、『向こう見ず』だけど」
「に、逃げ……コホン、ネコも無事に救助されて一安心。何かあったら、またファ…ううん、あたしを呼んでね。それじゃあ、またねぇ」
 リリーは正義の味方らしく悠然と去り際の台詞を残して立ち去ろうとして、ロープを断ち切ったが、慌てていたのだろう、その反動で橋の欄干から川の方へと落ちた。
「うっきょぅーーー!」
 激流を流されていく若葉が一枚。ニ、三度、荒れ狂う波間から垣間見られたが、あとは沈んだままで浮かび上がってはこなかった。
「今回の僕の台詞はこればっかりだけど……リ、リリー!」
 ウッちゃんが慌てて、リリーの流されていった方向へと飛んでいった。
(……自業自得……まあ、普通の魔法服を着ているから、多分死ぬことは無いだろう)
 全身ずぼ濡れになりながら美奈子は流されていったリリーを遠くに眺めながらぼんやりしていた。

「お姉ちゃん!」
「美奈子ちゃん!」
「大丈夫でしたか?美奈子ちゃん」
 下流へと流された美奈子の所にやっと辿り着いた少女と美穂、庸子が一斉に彼女に駆け寄った。全身ずぶ濡れになった美奈子は心底安心した笑顔でそれに応えた。
 しかし、恵子が顔を伏せて下を向きながら駆け寄る三人と美奈子の間に割って入った。
「?……恵ちゃん?」
 いつもと様子の違う恵子を訝しながら美奈子は顔を覗き込もうとしたその時、
 パン!
 恵子は美奈子の頬を平手打ちした。
 突然なことに全員の時間が止まった。しかし、じんわりと徐々に熱をもつ頬が美奈子の時間を動かした。
「……な!……」
「何てことするのよ!」
 しかし、先に動いたのは恵子の方だった。
「何ともなかったからよかったけど、何かあったらどうするつもりよ!あんなことが無くても、もし、川が深かったら!突然、深くなってたら!流れが急になってて足を取られたら!苔とかで滑ってコケたら!流されたらあっという間なのよ!溺れちゃうなんてすぐなんだよ!なんでそんな無茶するのよ!水を甘く見すぎよ!死んじゃったら英雄なんて何にもならないのよ!……なんでそんな無茶するのよ!なんで……なんで、そんな……そんな心配させるのよ!」
 最後の方は泣きじゃくりながら恵子は美奈子を叱った。美奈子も打たれた頬を抑えながら黙り込んだ。確かに恵子の言う通りで、反論する余地などない。今回はたまたま運がよかっただけで、流されていったリリーは自分だったかもしれないのである。軽率な行動を取ったことを美奈子は反省した。
「……ごめんなさい」
 美奈子は泣きじゃくる恵子に、そして、他の三人にも謝った。
「美奈子ちゃんが無事ならよろしいですわ。でも、今度からは私たちにも相談してくださいね」
「そうそう、私たち、友達でしょ?一人で先走りしちゃ駄目よ」
「……今回は許したげる。でも、今度やったら絶交よ」
 とりあえず四人は丸く収まったが、今度は少女が泣き出した。
「……ごめんなさい、ごめんなさい。あたしが、あたしが……」
 少女が責任を感じて泣きながら謝っていたのを恵子は少女の目の高さまでかがむと優しく微笑みながら少女の頭を撫でてあげた。
「いいのよ、もう。それじゃあ、美奈ちゃんが命がけで助けたネコちゃんを助けてあげましょうね」
 庸子が美奈子の濡れた体を拭くためにタオルを出して渡し、美穂がタモを借りた人に返しに行き、恵子と少女はずぶ濡れのネコをハンカチで拭いていた。
 美奈子が濡れた体を拭くのもそこそこにタオルを手に持ち、庸子の方を見た。柔らかな肌触りのよいタオルである。しかし、美奈子は意を決して、
「ヨーコちゃん、必ず同じ物を買って返すから、このタオル……」
「そんなことされなくても差し上げますわ」
「ありがとう!必ず返すから!」
 美奈子はタオルで包むように拭いて、そのまま芯まで冷え切ったネコを胸に抱きして暖めた。鼓動がだいぶ弱まっているかなり危ない。
「どうなさいます?美奈子ちゃん、動物病院へ連れて行かれます?」
 動物病院は保険が利かない。それぐらいは知っている美奈子は首を横に振った。一介の中学生に5万、10万当たり前の診察料を用意できるはずはない。もちろん、相原庸子にかかればそれぐらいは難なく用意できるだろうが、好意に甘えるのも限度がある。
「ネコちゃん、助かるの?」
 ショートカットのよく似合ったしっかりした顔立ちでいて、どこか愛嬌のある可愛い少女が、普段では見せないだろう不安な目を美奈子に向けていた。そんな目で見られたのでは美奈子も決心せざるえなかった。
「……とりあえず、家に連れて帰るよ。もしかしたら……何とかなるかもしれないし……」
 美奈子は猫を抱きながら、ちょっと躊躇いつつもそう言って立ち上がった。
「ほんと!お姉ちゃん!ネコちゃん、助かるの!」
 少女は喜色を浮かべて美奈子ににじり寄った。
「う、うん、約束するよ。だから、心配しないで、ええと……」
「あたし、神埼芽衣美(かんざき・めいみ)。樋野川小学校の5年生」
「わたしは白瀬美奈子。芽衣美ちゃん、安心してね、きっと助けるから」
「それじゃあ、約束よ、美奈子お姉ちゃん!」
 芽衣美に圧されて思わず美奈子は安請け合いしてしまった。どこまでも押しに弱いのは誰にも同じようだった。
「それでは、わたくしが美奈子ちゃんの家まで送っていきますわ。恵ちゃんと美穂ちゃんは神埼さんをよろしくお願いいたしますわ」
 庸子は自分の家に連絡して迎えを寄越したのだろう。手際のよさは折り紙付である。
「オッケー、任せて」
 美穂は快く承諾した。
 恵子がいつもの歯切れの良さとは打って変わってモジモジしていた。
「……美奈ちゃん、あの……叩いたりして、ごめんね。あたし……あの……」
 何か言いたくないことを言おうかどうしょうか迷っている恵子に美奈子はそれを制止するかのように口を開いた。
「いいよ、そんなこと。びっくりしたけど、嬉しかった。自分のことを本気で心配してくれる友達が出来たと思ったら」
 叩かれた頬を軽くなでて美奈子は照れくさそうに笑顔を返した。
「美奈ちゃん……」
「私も引っ叩いておけばよかったかしら」
「右に同じ」
「二人とも本気で心配してくれたのはわかってるから、恵ちゃんの一発で勘弁してよ」
 庸子と美穂が真剣に悩んでいるのを見て、美奈子は洒落っぽく困った笑顔を浮かべて両手を振った。
 五人の笑い声が河川敷公園に響いた。

 庸子の呼んでくれたお迎えの車には着替えも用意してあったので、それを借りて車中で着替え、家まで送ってもらった美奈子は玄関の扉をそっと開けた。どうやら、琉璃香はまだ帰ってきていないようで、とりあえず美奈子は安心すると、ネコを部屋に連れ込み、納戸から電気ストーブを引っ張り出し、毛布に包んで暖め、額に玉のような汗を浮かべ、スエットの部屋着を腕まくりしながら美奈子は必死にネコを看病した。
「とにかく、少しでも意識を取り戻してくれないと薬を飲ませられない」
 琉璃香の部屋に置いてある世に知られていない薬の数々、ちょっとでも間違えれば猛毒でしかないが、ちゃんと使えば、まさに劇的に症状を回復させられる。美奈子が今まで琉璃香のお遊びに付き合って生きてこられたのはそれらのおかげともいえる。美奈子にも多少の心得があるのでそれに賭けるつもりであった。
 美奈子の献身的な看病の甲斐もなく、夕方近くなってもネコは今だ意識を取り戻さず、呼吸も脈拍も弱くなってきていた。
「わたしじゃ、やっぱり無理なの?」
 美奈子は目に涙を溜めて自分の無力さを恨んだ。意識を回復させるための気付け薬を調合して与えたが効果はなく、自分の知っているあらゆる手段を試したが、どれも意識を回復させることは出来なかった。
「あら、美奈子ちゃん。帰ってたの?」
 突然後ろから声をかけられて美奈子は飛び上がらんばかりに驚いた。
「か、母さん!」
「何をそんなに驚いてるの?あれ?それ?」
 美奈子は琉璃香が指差した先のものを咄嗟に隠した。
「な、なんでもないわよ、母さん。何も無いよ」
 美奈子は慌てて琉璃香を部屋から押し出すように廊下に出た。
「何、隠してるのよ。見えたわよ、ちゃんと。いいもの拾ったじゃない」
「母さん、これは違うんだ」
「何が違うのよ」
「だ、だって……」
「ちょっと、診せてくれない?」
「母さん!お願い!食べないで!薬にしないで!実験しないで!」
「……美奈子ちゃん、私を何だと思っているわけ?」
「あ……ま……魔法少女」
「危なかったわね。もし、悪魔なんていったら即実験動物、魔女って言ったら即薬の材料だったのに」
「魔法少女は?」
「食べて欲しい?」
 美奈子は激しく首を横に振った。
「でしょう?でも、そのままだと今夜の峠は越えられそうになさそうだけど」
「お、お願い!母さん!この子を助けてやって!母さんなら何とかできるだろう!」
「まあ、出来ないことは無いけど……ただってわけにはいかないわね」
「……わかったよ。夕飯、掃除、洗濯一週間分」
「……そ、そんなものでは動かないわよ」
(充分心動いたくせに)
 美奈子はそう思ったが、そんな事を口にするほど愚かではなかった。
「それじゃあ……」
「美奈子ちゃんがちゃんと女の子らしくしてくれるなら、助けてあげなくも無いわよ」
 美奈子が二週間分を出してこないうちに琉璃香が先に条件を出した。二週間分にされるとそれに転びそうなのだろう。
「ううっ。そんなの、ずるい」
「ああ、かわいそうな子猫ちゃん。美奈子ちゃんの一円にもならないプライドのせいでその小さな命を散らしてしまうのね。なあんて、かわいそうなんでしょう!」
「くっ、わ、わかったよ。女らしくするから、お願い!」
「そんな言い方して信用できないなぁ。もっと他の言い方があるんじゃなぁい?」
 美奈子にとっては悪魔にしか見えない微笑で琉璃香は意地悪く言った。
「くっ……わ、わかったわよ。……これから、美奈子、女らしくするから、お願い!この子を助けてあげて!」
 瞳に星でも浮かべようかと思うぐらい美奈子は懇願した。さすがにちょっと琉璃香も引いたが、それでも満足そうな笑顔を浮かべて、
「オッケー。それじゃあ、ちょっと連れてくわね。あなたは宿題でも済ましときなさい」
 琉璃香はネコをひょいと乱雑に首根っこを持って摘み上げるとそのまま自分の部屋の方へと降りていった。
 美奈子はその後ろ姿を頼もしくも不安に目で追った。
(かみさま。どうか、母さんが変な気を起こさないように)
 美奈子の不安は治るかどうかよりも、むしろそこに大部分を占められていた。

 あまり当てに出来ない神様に祈りつつ美奈子は学校の課題を済ませ、一階に降りてくると琉璃香が顔に一本斜めの線を書いて、手術着を着て、ソファーに寝転がって大いびきをかいていた。
「なんとか上手くいったようだよ。よかったな、美奈子」
 父、賢治が美奈子に気が付いて微笑みかけた。手術など必要なかっただろうに、何故手術着を着ているか謎だが、おそらくは、間黒男の真似なんだろうなと思うことにして、美奈子はとりあえず安堵した。
「それで、ネコは?」
 美奈子はリビングの床を見渡したが、それらしき姿が見当たらない。
「テーブルの上にいるよ」
 美奈子がテーブルの上に視線を移すと、両前足でマグカップを挟んでミルクを元気に飲んでいる身体に包帯を巻いたネコが座っていた。
「よかった!元気になったんだ……?」
 一度はホッとして喜んだものの、恐ろしく違和感のある光景に美奈子は首をかしげた。
 ネコはマグカップから口を離して、口の周り一杯に牛乳の白いひげをつけて「くー!五臓六腑に染み渡る」などと呟いている。そこで、美奈子と視線が合って、ネコは慌ててマグカップを横に置いてきっちりとネコのお座りをした。
「これは美奈子さま、この度は助けてもらって、本当にありがとうございます」
「あ、あ……ううん、当然のことだから……」
 美奈子は思考が混乱して普通に受け答えした。
「素晴らしい!素晴らしいお人ですね、美奈子様は。いやあ、なかなか言えませんよ、そんな台詞。子供達に追いまわされてうっかり川に落ちてしまったのは運が悪かったですが、美奈子様みたいな人に助けてもらったのは本当に幸運でした。いつもの僕ならあんなことにはな……」
「ちょ、ちょっと待った」
 やっと思考の整理が出来たのか美奈子は喋りつづけるネコの言葉を遮った。
「はい?」
 ネコは怪訝な表情で美奈子を見返した。どう見てもしゃべる以外は普通のネコである。
「一つ訊いていいかな?」
 美奈子は冷静さを失わないように静かに言った。
「一つでも二つでも何でも聞いて下さい。答えられる事なら、何でも答えますよ」
「……最初からしゃべれた?」
「当然ですよ。日本語とネコ語、それと北京語はマスターしています。トリリンガルとういやつです。こう見えてもインテリデンジャーなんですよ、僕は」
「え、えーと、母さんに何かされたせいでしゃべれるんじゃないん……ないのね」
「?お話がよくわかりませんが、おぎゃあと生まれた時から僕はしゃべってました」
「あら、美奈子ちゃん、マオ族とは知らずにこの子拾ってきたの?」
 いつのまにかエプロン姿に着替えた琉璃香が意外そうに言った。
「マオゾク?」
「魔法の魔に尾っぽの尾で魔尾族とも、真の尻尾で真尾族とも言われる使い魔の一族よ。魔女とか魔法少女とかの使い魔としてよくでてくるのよ、知らなかったの?」
 美奈子は琉璃香の言葉に首を縦に振って肯定した。
「あなたのライバルの魔法少女、ええと、ファンシー・リリーとか言ったけ?あの子の側にいる使い魔もマオ族よ。確か、ウッテンバンカーハットとかいう白い犬型の」
「ウッテンバーガーハイトでしょう、それを言うなら」
「ウッテンバーガーハイト!美奈子様はウッテンバーガーハイトを知っているんで?」
「ええ、まあ、一応」
 美奈子はネコの迫力に押されて頷いた。
「奴がこの街にいたとは!これは天の采配!しかも、美奈子様、その魔法少女のライバルということは美奈子様も魔法少女ということですね?」
「これは本当についている!奴は素質ある者の使い魔にしかならないから、美奈子様、その魔法少女にはさぞ苦戦してるでしょう?ええ、皆まで言わなくてもよいですよ。わかってます。善戦したけど、運が無かったのでしょう?確かにその通り。どうです?僕を美奈子様の使い魔の末席にでも加えてくれませんか?命救ってもらったお礼を兼ねて一肌脱ぎます。絶対、後悔はさせません」
「よかったじゃない。使い魔一匹もいないんだから、なってもらいなさいよ」
「ええ!美奈子様、自力で魔法少女になったんですか?それはまた、すごい!」
「なったんじゃなくて、ならされたんだって」
「よくわかりませんが、使い魔一匹もいないのでしたら、さぞ苦しい戦いでしたでしょう?でも、これからはそんなことありませんよ。僕がついたら、百人力です」
「いや、そうじゃないんだけどね」
 美奈子は苦笑を浮かべて、対リリー戦を思い出していた。
「いいのですよ、そんなやせ我慢しなくても。別に恥ずかしがることはありません。使い魔なしの魔法少女の戦いがどんなに辛いかはよく知ってます」
 ネコはその苦笑いを誤解して受け止めて一人頷いて納得していたが、不意に美奈子のほうを真っ直ぐ見て、
「ところで、美奈子様の魔法少女名はなんと?」
「え?あ、ラスカル・ミーナ」
「ラスカル・ミーナ……というと悪の魔法少女系ですね。意外ですね。こんなに立派な人なのに。何か、やむにやまれぬ事情というものがあるのですね?いえ、言わなくてもいいです。美奈子様がいつか話したくなったときに話してくれたら、それでいいですから」
「あ、あのね……」
 美奈子は何だかとてつもなく妙な方向へ話が行っている事に不安を覚えてネコにちゃんと事情と現状を説明しようとした。がしかし、先にネコの方に話を続けられてしまった。
「僕の名前は銀鱗(イーリン)っていいます」
「イーリン?」
「よし!契約成立です!今日から、僕は美奈子様の使い魔です!よろしくお願いいたします。ご主人様」
「え?ちょ、ちょっと!どうして?」
 突然のことで何がどうなっているか分からずに美奈子が目を白黒させていた。
「使い魔は自分の名前を主人として認めた者に教えて、それに応えてもらったら契約成立なのよ」
 何も知らない娘に満面の笑顔で琉璃香が教えてあげた。
「そ、そんなあ!」
 ちゃらりららりん。ラスカル・ミーナはレベルアップしました。力が2上がりました。知力が5上がりました。素早さが9上がりました。魔法制御が8上がりました。魔法容量が38上がりました。不運が51上がりました。
「あらあら、リリーちゃんよりも先にレベルアップしちゃったわね。これでまた当分負けないわよ」
「いっそのこと、このまま無敗でいてくれると父さんも嬉しいぞ」
「お願いだから、もう止めて」
 作者と読者の期待を裏切らず、益々強大な力を手に入れた悪の魔法少女ラスカル☆ミーナ。皆瀬和久君に幸せの日々はやってくるのだろうか?それは作者すらも決めてない。

つづく


ミーナ第3話 もぐたんさん

イラスト:もぐたん さん

次回予告
名前もさりげなくレベルアップして・から☆になり、ファンシー・リリーとの実力差をますます広げてしまったラスカル☆ミーナ。しかも、その割には主人公としての立場もだんだん周囲のキャラに食われていっている始末。しかし、これはほんの第3話の前半。更なる不幸が彼女を襲う。
ねこみみむしゅめのねの字も26回しか出てないじゃないかとお怒りのあなた!お待たせいたしました。
次回!第3話後編 新生!ねこみみむしゅめ!十数行後に公開決定!















魔法少女 ラスカル☆ミーナ

作:南文堂




第3話後編 新生!ねこみみむしゅめ

 ディスプレー前で唖然としている間にあっという間に時間が過ぎて、銀鱗を助けた翌々日の昼下がり。
 ピンポーン!
 軽快な呼び鈴が鳴って琉璃香が「はいはいはいはーい」などとスイッチも入っていないのに応えながらマイクのところまでパタパタと駆け寄った。
「はい。どちら様ですか?」
 インターホンのカメラに写っているのは小学校5年ぐらいのショートカットのよく似合った利発そうな可愛い女の子であった。琉璃香にはその子を見るのははじめてだが、誰かは予想がついていた。
「あた……わ、私、神埼芽衣美といいます。白瀬美奈子さんはいらっしゃいますか?猫の件でお世話になったとおっしゃっていただければ、わかってくれると思いますけど」
 家で練習してきたのだろう、芽衣美はちょっとたどたどしくはあったが、きっちりと挨拶をした。
「はい、聞いているわよ。あなたが芽衣美ちゃんね。ちょっと待ってね……美奈子ちゃん!芽衣美ちゃんがお見えになったわよ!」
「え?も、もう!?」
 昨日、美穂から芽衣美の連絡先を聞いて、銀鱗が無事回復していることを教えたら、ぜひ、お見舞いに来たいと言って、来ることになったのだった。
「早く降りてらっしゃい!」
 階段を騒音と共に駆け下りた美奈子が居間の入り口から顔を出した。
「随分と早かったのね。か…琉璃香さん、お菓子とかお願いね」
「美奈子ちゃん、その格好で出るつもり?」
 玄関へ向かおうとする美奈子を琉璃香が呼び止め、呆れたふうに美奈子の下半身に視線をおろした。それにあわせて美奈子が視線を落として顔を真っ赤にした。
「あ、スカート!」
 再びどたばたと美奈子は階段を駆け上がっていった。
(あのぅ……インターホン、入ったままなんだけど)
 玄関先で中でのやり取りを聞いていた芽衣美は苦笑を浮かべていた。
『というわけで、ちょっと待っててね』
 苦笑いを浮かべている芽衣美にインターホンから悪戯っぽい琉璃香の声が響いてきた。
(……確信犯だ)
 芽衣美は美奈子お姉ちゃん、苦労してるのだなとちょっと可哀想になった。

「いらっしゃい、芽衣美ちゃん。さ、何も無いけど、上がってちょうだい」
 と言わなければならないところだが、玄関を開けて芽衣美を一目見て、美奈子はその言葉を見失ってしまった。それの代わりに出た言葉は、
「め、芽衣美ちゃん。その格好……」
「え?あ!これはお母さんが、ネコのお見舞いに行くのならそれなりの格好していった方が面白いって。驚いた?」
 芽衣美は純白のエプロンが眩しい、スカートの裾がパニエで膨らんだ黒地のエプロンドレスを着ており、首に巻いたチョーカーには鈴の飾りがついており、エプロンの裾にも小さな鈴の飾りが揺れていた。後ろから覗く太い黒のモールは尻尾のように微妙なカーブを描いて、頭につけたカチューシャには猫の耳を模した飾りがついていた。
「め、芽衣美ちゃん、は、恥ずかしくない?」
「美奈子お姉ちゃん。これぐらいで恥ずかしがってたら、有明とか行けないよ。もっとすごいのがいるんだから」
 最近、市民権は得てきているとは言うものの、普通の所でそういう格好をするのは結構勇気がいると思う美奈子に対して平然と芽衣美は答えた。
「だからって、普通の時にまで……」
「日頃からこうやって着て、鍛えておかないと、いざ本番の時にさりげない仕草とかで萌えさせられないのよ。なんたって観客は妥協を許さない人たちばかりだもん」
 確かに、芽衣美の衣装は一般的ではないが、彼女はそれを見事に着こなしており、似合っていて文句無しに可愛い。
「うん、まあ、それはそれとして、どうぞ、上がって」
 美奈子は芽衣美を見ながら家の前を通り過ぎていく通行人と何人も目が合って、恥ずかしくなったので、芽衣美をとにかく早く家に入れることにした。
「いらっしゃい、芽衣美ちゃん。で、いいかしら?」
「はい。今日はぶしつけにおしかけて、すいません。これ、母からです。つまらないものですがって」
 芽衣美は菓子折りを袋から取り出して琉璃香に手渡した。
「あらあら、ご丁寧にありがとうございます。そんなに気を使わなくてもよろしいのに。でも、立派に挨拶できるのね。えらいわ。もう、そんなに緊張して無理しなくてもいいのよ。普段通りでいいのよ。私もそうするし」
「ありがとうございます、お姉さま」
「もう、かわいい!美奈子ちゃんもこれくらい可愛かったらいいのに」
「か……琉璃香さん、芽衣美ちゃんが苦しがってるから放してあげましたら?」
 力いっぱい芽衣美を抱きしめている琉璃香に美奈子が冷ややかな視線を向けた。
「あ、ごめんなさい、芽衣美ちゃん」
「だ、大丈夫ですぅ」
「全く、手加減とか知らないんだから。それじゃあ、芽衣美ちゃん、わたしの部屋に行きましょう」
「うん」
 美奈子が部屋の扉を開けるとあぐらをかいて漫画を読んでいた銀鱗が慌てて、本を放り出してネコのように床に寝そべった。
「にゃ、にゃあ」
(銀鱗のやつ、あれほどネコのふりしてろって言ったのに、なんてことしてるのよ、もう!)
 美奈子は部屋に入りながら銀鱗を軽く睨んだが、銀鱗はそっぽを向いて視線を外して「何のことでしょう?一介のネコにはわかりかねます」と言う顔をしていた。
「何だか、今、漫画を読んでいたように見えたんだけど、美奈子お姉ちゃん、見た?」
「え?そう?錯覚じゃない?多分漫画の本にでもじゃれてたんだわ?いたずらっ子だから、銀鱗君は」
「うーん、そうかな?あ、ネコちゃん、イーリンって言うんだ」
「うん。胸のところに銀色の鱗みたいな模様があるでしょう?だから銀の鱗って書いて、中国読みでイーリンっていうの」
「ふーん、じゃあ、リン君って呼んでいい?」
「そっちの方が呼びやすいわね。そしたらわたしもリン君と呼ぼう」
(ご、ご主人様ぁ、勝手に由緒正しき名前を縮めるなんてひどいですわ)
(うるさいわよ。使い魔の呼び名に関する抗議は48時間前までに所定の窓口に書類を提出する以外受け付けないのが決まりなのよ!)
 リリーがウッちゃんに言った台詞を真似て銀鱗の抗議を突っぱねた。
(うう、漫画なんか読まなかったらよかったわ。しくしく)

「あ、もうこんな時間だ。すっかり遅くなっちゃった」
 芽衣美は部屋の時計を見て暮れかけた外を見て慌てた。
「ああ、本当。ごめんなさいね、気が付かなくて」
 ついつい時間が経つのを忘れていた美奈子がすまなそうに謝った。
「ううん、あたしも楽しかったから、気が付かなかったし」
「それじゃあ、送っていくわ」
「そんなの悪いです。いつも今ぐらいに帰ってるし、送ってもらったら、美奈子お姉ちゃんが真っ暗な道を帰ることになるもん。そんなの駄目だよ」
「そう言っても……」
「大丈夫だから心配しないで。あたしもこれでも結構大人なんだから」
 小さな体を精一杯大きく見せて芽衣美は胸を張った。可愛い意地っ張りに美奈子は複雑な微笑を浮かべて、自分もこれぐらいのときに妙に子供扱いされるのが嫌で仕方なかったことを思い出していた。
「うーん、それじゃあ、本当に気をつけて帰るのよ。人通りの多い道を選んでね」
「あら、芽衣美ちゃん、もう帰っちゃうの?」
 台所から顔を出して帰ろうとする芽衣美を見つけ、琉璃香が玄関の方へとやってきた。
「か…琉璃香さん。もうって時間じゃないわよ」
 時計は既に6時半を過ぎようとしている。日が長いとはいえ、芽衣美が家に帰りつく頃には空は藍色に染まっているだろう。
「お夕飯とか食べていけばいいのに」
「ありがとうございます。でも、お母さんも心配してるかもしれないし帰ります。琉璃香さん、今日はお邪魔しました」
 芽衣美はぺこりとお辞儀をした。10歳とは思えないしっかりした娘である。
「いえいえ、何のお構いも無く。また遊びにきてね、芽衣美ちゃん」
「はい、よろこんで!」
「それじゃあ、本当に気をつけて帰るのよ」
「うん、わかった。美奈子お姉ちゃん、今度、一緒にコスプレしようね」
「……考えておくわ」
「ちゃんと考えておいてね。美奈子お姉ちゃんなら絶対似合うから。コスプレ歴10年の私が言うから間違い無しよ」
「……うん、ありがとう」
「それじゃあ、リン君、バイバイ。また遊びに来るね。えーと、お邪魔しました」
 芽衣美は銀鱗を軽く撫でてやり、再びぺこりとお辞儀すると夕暮れの住宅街に消えていった。
「明るくていい子ね」
「そうだね」
「ところで……」
「なに?」
「コスプレするの?」
「……」
 期待に目を輝かせている琉璃香に何も言う言葉が見つからない美奈子は軽い目眩を覚えた。
「その時は母さんも呼んでね」
「……写真にでも撮るつもり?」
「まさか!それは賢治さんのお仕事。私もするつもりよ」
「……」
 期待に目を輝かせている琉璃香に何も言う気力がおきない美奈子は軽い頭痛を覚えた。
「でも、一人で帰すのはまずかったかしら?」
 頭を抱えそうになっている美奈子を他所に琉璃香が急に真面目な顔で小首をかしげた。
「!なにかあるの?」
 琉璃香のその表情を見て、さっきまでの頭痛が吹き飛び、変わりに底知れない不安を覚えて美奈子が訊いた。
「最近、公園で変な集団が横行しているって話だから」
「え?それホント?」
「ええ、何でも、むりやりコスプレさせられるらしいわよ。被害者がもう何人も出てるし」
 美奈子が起こす騒ぎが大きすぎて、公園の事件は大きく扱われなかったようだった。
「なんでそんなことを早く言ってくれないんだよ」
「だって、訊かなかったから」
 あっさりと事も無く言い放つ琉璃香は「ほら、ボーっとしててもいいの?」という視線を美奈子に送った。
「ああ、もう!リン君、行くよ」
「……結局、僕の名前はリン君にされたんですね、ご主人様」
 銀鱗の文句に耳を貸さずに美奈子はもう雑踏の中に消えて姿の見えない芽衣美の後を追った。

 夕暮れ刻は夜より昏い。今も昔も、いや、現在だからこそ、尚更そうである。
 空は充分に明るいが陽は既に建物や山の影へと身を潜めてしまっている。しかし、空の残照が目に残り、地面をより暗くする。建ち並ぶ街灯は点灯しようかしまいかと微妙な暗さに悩んで点かず、空より早く地上は夜を迎える。
 逢魔が刻を家路に急ぐ芽衣美は美奈子の忠告どおり、なるべく人通りの多い道を選んで足早に歩いていた。
「?」
 公園の前を通りかかった芽衣美がふと立ち止まってあたりを見渡した。
 んみゃー
 かすかに公園のほうから子猫の鳴く声が聞こえた。何か不安に怯えるような声であった。
「……公園を抜けると家には近道だし、早く帰ったほうが安全だし、公園は抜け道だから結構人通りもあるし、いいよね?」
 ネコのような好奇心が芽衣美の中で膨らむと、誰に言い訳するでもなく呟いて、90度方向転換して公園へと入っていった。
 公園は樹木が多いためか、街灯が既に点いており、人通りは少なかったが道は充分に明るかった。そのため、多少の不安のあった芽衣美も安心して猫の鳴き声の元を探した。
「ねこちゃーん、ねこちゃん、こねこねこねこねこちゃんやーい」
 んみゃー。
 芽衣美の呼びかけに応えるようにネコの鳴き声が聞こえ、芽衣美はそちらの方、噴水のある広場に向かった。人通りが多少なりともある抜け道からは外れるが、道の明るさが芽衣美に不安を感じさせずに足を向けさせた。
 公園の中心部にある噴水広場にやってきた芽衣美は辺りを見渡した。
 んみゃあ
「!」
 誰も居らず閑散とした広場の真中にぽつんとカン袋に入れられ、首だけ出した状態の子猫を見つけて芽衣美は慌てて駆け寄った。地面にかかれた奇妙な文様にも気が付かずに。
 芽衣美がネコに駆け寄ろうとした瞬間、その奇妙な文様が淡い緑色の光を発した。
「きゃう!」
 駆け寄ろうとしたポーズのまま金縛り状態で固まってしまった芽衣美は悲鳴をあげた。
「な、なんの?これ!」
 パニック状態の芽衣美を他所に、突然明るかった周囲が暗くなり、何処からとも無くスポットライトを浴びて、顔はマスクをしてわからないが、30代後半ぐらいのタキシードに身を包んだ紳士の人影が浮かび上がった。
「レディース エーンド ジェントルマン!お待たせいたしました!第322回ネコ耳娘品評評議会を開催いたします!」
 その言葉を合図にマスクで顔を隠した紳士淑女が茂みの中から机と椅子を持って現れ、それを並べて審査員席を作ると、その前に着席した。それに続いてわらわらとタキシードとドレスに身を包んだ人たちが現れ、その後ろに並んだ。どうやら観客らしい。
「どうですか、最近は?」「いや、最近は落ち着いてしまった駄目ですね」「○○はいかがで?」「××もよいでしょう?」「けもの度が低くて私的には萌えが」「いやいや、あれぐらいに抑えてある方が私的には」「△△は?」「お、それは知りませんな。どんなもので?」「××の作家がかかれている新作ですよ、なかなか萌えです」「おお、そんなものが出てるのに気付かないとは私も堕落しましたな」
 観客の間で何やら雑談が交わされ、静かな公園が急にざわついた。
「な、なんなのこの人たちは!」
 芽衣美は背筋に寒いものが走るのを感じた。伊達にコスプレ歴10年ではない。やばい系統の人たちには鼻が利く。そして、芽衣美の本能はこの集団を、太鼓判を押して折り紙付きで危険と、初舞台を踏む芸人の鼓動よりも激しく警鐘を掻き鳴らしていた。
「皆様!ご静粛に!さて!今回、エントリーしたネコ耳娘は近年稀に見る逸材と私、信じて疑いません。ご期待くださいませ!それでは、エントリーナンバー358。神埼芽衣美!」
 スポットライトが芽衣美に当ってその姿が夜の公園に浮かび上がる。
 駆け寄ろうとしたポーズ、そのままなのでかなり間抜けであるが、審査員と観客にどよめきが起こった。
 司会者が芽衣美の傍まで近寄ってくると、手に持ったカードを開いた。
「神埼芽衣美ちゃんは樋野川小学校に通う小学5年生。明朗活発、明るく誰にでも優しい性格はクラスの人気者。ショートカットがよく似合っておりますし、ネコのように好奇心旺盛なところもよいポイントとなります。
 しかし、なんと言っても、今回、素晴らしいのは自ら、最初からネコ耳娘のコスプレをしていると言う点でしょう。これだけでもプラス10ポイントですが、黒のエプロンドレスに白のエプロン。パニエで膨らんだスカートの裾はもうお約束のプラス2ポイント。
 モールで作った尻尾は丁寧な造りで興を削がず、可愛さを演出するために微妙なラインがそそりますね。プラス3ポイント。
 首にチョーカーを巻いてそれに鈴をつけるところは猫耳の王道をわかっています。ううん、プラス3ポイント。
 頭につけた猫耳付きカチューシャ。自作でしょうか?非常によく出来ています。個人的には商品化をして欲しいものです。プラス3ポイント。
 猫手袋が無いのが少し残念ですが、オプションとして追加すれば全く問題無しでしょうから、減点無し。
 さあ、司会者ポイント21ポイントと高得点をたたき出したエントリーナンバー358番、神埼芽衣美ちゃん。さて、審査員の先生方はいかに?」
 興奮口調で一気に喋りきった司会者は審査員席にマイクを向けた。
「オーソドックスすぎて……と思うかもしれませんが、よく着こなしています。日頃から何度も着ているのでしょう。その点も考慮に入れるとなかなかポイントは高いですね」
 と初老の威厳のありそうな男が評すると、
「こういったデザインは少し大人しすぎますわ。もう少しはじけた感じが欲しかったのですけど、これだけ可愛いと特に文句はありませんわ」
 と色香を滲み出している熟女が続け、
「けもの度が足りていないのは私的には残念だが、その点以外は非常に萌え」
 と30代ぐらいの恰幅のより男性が言葉短くコメントし、
「あえてコメントさせるつもりですか?完璧ですよ。それ以外に言うことは無いでしょう」
 もう一人の30代のやせた男が鼻息荒く賞賛し、
「ねこみみむしゅめだ!ねこみみむしゅめだ!」
 20代前半の男が雄たけびを上げる。
「審査員の先生方もなかなか好評のようですね。それでは早速、採点をどうぞ!」
 司会者の合図で審査員は一斉に札を上げた。
「9点、9点、9点、10点、10点!47点!これまで最高得点です!」
 観客席からざわめきが起こった。更に興奮しているの司会者の元に一人の女性が駆け寄って一枚の紙を渡した。
「あ、今、インターネットでの投票も集計されたようです。……なんと、3212票、321ポイント。合計、389ポイント!歴代第3位の高得点!フュージョンラインの300ポイントも楽々クリアーしております!」
 観客席から歓声が起こった。
「い、一体、何なの!」
 芽衣美はたまらず叫んだ。
「おっと、これは説明がまだでしたね」
 司会者は満面の笑みを浮かべて芽衣美に向き直った。
「私ども『猫耳娘評議会』は二十年もの歴史を持つ由緒正しき猫耳を愛する会です。しかし、コスプレ会場でしかそれを見ることが出来ません。市民権を得ているとはいえ、まだまだ一般の皆様の参加は少なく、せっかくの逸材をみすみす見過ごすことになり、まさに臍を噛む思いでした。そこで世に猫耳の似合いそうな少女を見つけて、猫耳のコスプレをしていただいて、品評しようと言うものなのです」
 芽衣美は血の気が引いた。本気で危ない集団である。
「今はまだわかってくれませんが、いずれ皆わかってくれる日が来るでしょう、猫耳の素晴らしさが。と言うか、わからないのは人としておかしいです。さ、あなたも明日から猫耳少女としてその素晴らしさを伝えていくのですよ」
「いやよ!そんなの!」
 芽衣美は涙目になりながらも必死に断った。
「なに、あなたは何もする必要は無いのですよ。ただ普通に暮らしていただければいいのです。わたくし達があなたを24時間体制で行動を観察記録し、しかも護衛として、あなたに近づく悪い虫は徹底的に排除しますから、ご安心を」
「犯罪だよ!そんなの!」
「社会的ルールなど大儀の前には些細なことですよ」
「た、助けて!」
「無駄ですよ。周りには結界を張ってあります。声も聞こえないし、誰も来ませんよ。さあ、そこのネコと融合して、ねこみみむしゅめとなりなさい」
「な、なによ、それ。そ、そんなの無理だよ」
「心配することはありません。私たちはあるお方から、その術を学んでおります。この結界もその一つです。融合の方は数に限りがございますので乱発は出来ませんが、ご安心を。あなたにはその権利がございます。そのための品評会でもあるのですよ、ふふふふふふ」
「い、いや!助けて!お母さん!お父さん!美奈子お姉ちゃん!」
 芽衣美は迫り来る司会者に恐怖を感じて目を閉じて叫んだ。
 その時、タイミングよく何者かが茂みの中から飛び出してきた。
「はあい!呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん!名前は入っていなくてもピンチになれば即参上!愛と正義の魔法少女!ファンシー・リリー!ここに推参!って、リリー、結構恥ずかしいよ、これ」
 飛び出したのは宙を飛ぶ白いぬいぐるみのような犬を連れた若草色と水色の派手なコスチュームの上にピンクのどてらを着て、口にマスクをして、頭に氷嚢を乗せた少女だった。
「ごほごほっごほげほ」
 咳き込みながら何か喋っているが、距離が遠くて聞こえない。でも、何か文句を言っていることはわかった。
「確かに、風邪を引いて喋れないから、僕が代わりに台詞を言わなきゃならないのはわかるけど、なるべく恥ずかしくないのにしてよ」
 ぬいぐるみ犬、ウッちゃんは興奮したリリーを宥めるように自己主張した。
「げほごほべほえほ!」
 それなら、もう、あなたには頼まないと言うのだろうか、リリーはバトンで芽衣美たちを指差し、激しく咳き込んだ。呼吸困難でも起こしそうで見ているほうが怖い。
「む、無理に喋らなくていいよ。わかったよ、リリーの好きなようにしてよ」
「ごほ」
 わかればよろしいと言う意味だろう。一つ咳き込んで、リリーは納得した。
「さあ、私が来たからもう安心よ、お嬢ちゃん。悪い奴らをこの、ファンシー・リリーが懲らしめてあげるから。さあ、あなた達の悪巧みは……え?早い?ビシッと相手をバトンで差してからだって?ご、ごめん」
 ウッちゃんが素直に謝るとリリーは頷いて司会者をバトンで指し示した。
「あなた達の悪巧みは、宇○井健ばりの聞き耳を立てて、そこの茂みの中で聞かせてもらったわ。もう逃げられないわよ、観念して投降しなさい。いま投降するなら、全殺しの半額セールでとってもお得よ!って、リリー、もうちょっと言葉選ぼうよ」
 ウッちゃんはリリーに無言で頭を叩かれた。
「い、痛いなあ、もう!……えーと、とにかく!選びなさい!投降か抵抗か!生か死か!」
 気を取り直してビシッとポーズを決めたリリーはご満悦の表情であったが、傍目にはどてらに氷嚢、マスクをしているので間抜け以外の何ものでもない。
 芽衣美も先日の鉄砲水のこともあり、脳裏によぎったのは不安の二文字であった。
「ああ、えーと、その、まあ、派手な衣装を着たお嬢ちゃん。結界に踏み込んでこれたのは驚きですが、一人で何ができるのかな?しかも、見たところ、体調が悪そうだし」
「な、何故それを!って、バレバレだよ、リリー」
「まあ、このまま、お帰りいただいて今日のことを綺麗さっぱり忘れていただけるのなら見逃して差し上げましょう」
「それはこっちの台詞よ!これでも喰らいなさい!」
 リリーは腕を天に掲げて雷球を出現させた。

 美奈子は公園の道を走りながら隣で併走する黒猫に問い掛けた。
「リン君、本当に公園に入ったの?」
「僕の鼻は、犬ほどは利きませんけど、人間よりも利きます。信じてください」
 黒猫、銀鱗は鼻を鳴らして美奈子に答えた。
「わかった。信じる」
 美奈子はえもいえぬ不安に駆られ、焦りを見せていた。
(こう言うときの勘ってよく当たるから!芽衣美ちゃん、無事でいてね)
 美奈子は芽衣美の身を案じて、走る速さを上げた。
「ご主人様!前!結界があります!」
「ちっ!」
 美奈子は自分の悪い予感が当たったことに舌打ちして、右手にバトンを出現させた。
 バトンを手に取ると同時に黒髪が金髪に変わり、結い上げられてまとまると、ブラウスが溶けて光沢のある黒いレザーのワンピースに変わり、キュロットスカートが溶け落ちるように足にまとわりついてロングブーツに変わり、頭上に帽子が現れ、暗黒魔法少女、ラスカル☆ミーナに変身した。
 ミーナは変身しても魔法少女らしく名乗ることもせずに、走る速度を落とさず結界をバトンの一振りで切り裂くとその中に突入した。
「それはこっちの台詞よ!これでも喰らいなさい!」
 結界に入るや否や、ウッちゃんの声がミーナの耳に飛び込んできた。ミーナがそちらを見ると、広場の方でリリーがピンクのどてらを着て、腕を天に掲げて頭上に雷球を発生させていた。そして、その攻撃目標らしき方に目を移すとかけっこのポーズで固まっている芽衣美とタキシードやらドレスやらに身を包んだ紳士淑女の集団が見えた。
 事情は全くわからなかったが、情況が最悪なのはミーナにも理解できた。
「雷球が大きすぎるよ、リリー!もうちょっと抑えないとあの娘も巻き添えだよ」
 ウッちゃんの洒落にならないという声が公園に響いた。雷球はいまだ成長を続けている。
「ま、まさか、制御が効かないとか言わないでよ」
 ウッちゃんの青ざめた声にリリーの首が縦に振られた。
「な、何とかしなくっちゃ!」
 ウッちゃんの悲鳴に近い声が聞こえたが、ウッちゃんに何とかできる範疇はすでに越えていた。
 何とかできる可能性のあるミーナはリリーから離れすぎていて、リリーの魔法に干渉できない。干渉できる範囲に入る頃にはミーナにもどうにもならないところまで雷球は成長している。魔法で加速して距離を詰めれば干渉するだけの魔力が足りない。どっちも間に合わない。
「……銀鱗」
 ミーナは隣を飛ぶように走る黒猫に声をかけた。
「……なんです?ご主人様」
「あなたが川に流されているのを見つけたのは芽衣美ちゃんなんだよ。だから、芽衣美ちゃんがあなたの命の恩人なのはわかるね?」
 雷球がそろそろリリーの支えられる限界点に達しようとしている。
「知ってます」
「命を助けてもらった恩義に応えるのは当然だね?」
 雷球からのフィードバックでリリーの顔が苦痛に歪んでいる。もう、限界らしい。
「当たり前ですよ、そんなこと」
「それじゃあ、問題ないな。芽衣美ちゃんを助けてやってくれ!」
「え?どうやって?」
「こうやって!」
 ミーナは飛ぶが如く走る銀鱗の首根っこを掴んでそのまま芽衣美に向かって投げつけた。
「ひょぇぇぇぇぇぇ」
 銀鱗は芽衣美に向かって一直線に飛ぶようにではなく、本当に飛んで行った。
 銀鱗が芽衣美に体当たりするようにぶつかって、しがみつくと同時にリリーの手を雷球が離れた。しかも、よりにもよって芽衣美に直撃するコースである。
「ひぇぇぇぇぇぇぇ」「きゃぁぁぁぁぁぁ」
 ウッちゃんに何かできる範疇を越えているのは銀鱗にとっても同じことであった。恐怖で銀鱗と芽衣美は悲鳴をあげた。
「銀鱗!ミーナの名を持って命ず!神埼芽衣美と融合!」
 ミーナは間髪いれずに銀鱗に最上級の命令を発した。銀鱗と一時的にでも融合すれば雷球に何とか耐えられるかも知れない。これが今ミーナにできる唯一のことだった。
 銀鱗と芽衣美の融合と雷球の直撃はほぼ同時であった。
(間に合ったか?!)
 ミーナは手ごたえを感じてはいたが、雷球は着弾したら周囲に雷撃を撒き散らすはずなのに芽衣美のいた所に留まっていることに不安を覚えて急いで駆け寄った。
 しかし、その雷球も次第に収束し始め、雷球のあった場所の地面が削りと取られており、そのくぼみに片膝をついた人影が浮かび上がった。
「芽衣美ちゃん!銀鱗!」
 人影が呼びかけにゆっくりと反応した。カチューシャではなく本物の猫耳をぴくつかせ、モールでなく本物の尻尾をくねらせ、縦長の瞳孔を持つ深緑色の瞳をミーナに向けた。
「ミーナ……お姉ご主人さまちゃん?……あ、あれ?僕?えーと?あたし、へんだよ。おかしいよ」
 融合による記憶の混乱を起こしているらしく、戸惑った表情を見せていたが、ほどなく情報の整理がついたらしく、すぐにしゃきっとした表情に変わった。
「うん。事情はわかったわ。ミーナお姉ちゃん。ありがとう」
 猫耳娘、芽衣美がにっこり微笑んだ。
「す、すばらしい!猫耳娘だ!完璧だ!パーフェクトだ!さあ、その娘をこっちに寄越しなさい」
 今までめまぐるしい展開についていけなかった司会者がやっと展開に追いついてミーナ達の方へと近付いて来た。
「誰が渡すか!」
「べーだ!一昨日来なさい!」
 ミーナと芽衣美に同時に拒否されて司会者は顔を引きつらせた。
「どうやら調教が必要なようですね。ネコのように気紛れもよいですが、程と言うものがあるんですよ」
 司会者は懐から符を取り出して扇のように広げて見せた。観客や審査員もいつの間にかミーナ達を取り囲むように移動している。
「あるお方に作っていただいた符です。とても貴重なものですが、あなたも猫耳が似合いそうだから、司会者特権であなたも特別に猫耳娘にして差し上げましょう、ふふふふふふ」
 司会者は笑いながらにじり寄った。ミーナはその符の筆跡をどこかで見たことがあるような気がした。何処で見たかは思い出せなかったが、その符が本物であることはわかった。
 これだけの人数を一度に相手するのはさすがのミーナでも骨が折れる。かと言って包囲網を一点突破で抜けても司会者の背後から攻撃されたら、芽衣美を守れない。そうなると、残る手は一つだけだった。
「生兵法は怪我の元。そんなもの振り回してると自分が猫耳娘になるよ」
 ミーナはバトンを扇状に広げると軽く扇いだ。そのひと扇ぎで意思ある風が生まれ、司会者の持っていた符を吹き飛ばした。吹き飛ばされた符が司会者と審査員、観客に次々と襲い掛かった。
 符が身体に密着した人たちは次々と猫耳娘に変化していった。
あるものは衣服が消え去ると共に体毛が伸び、猫のような毛皮になり、けもの系猫耳娘に。
あるものは幼い少女に姿を変えて猫耳帽子と猫手袋をしただけのハイブリッド系猫耳娘に。
あるものは女子高校生風に姿を変え、センサーの用なものが耳の変わりに生えて万能文化系猫耳?娘に。
あるものはエプロンドレスに身を包んだオーソドックスな猫耳をしたメイド系猫耳娘に。
などなど千差万別、古今東西ありとあらゆる猫耳娘が生み出されていった。
「それは邪道だ!」「この魅力がわからないなんてどうかしてるにょ!」「どうかしているのはお前だにゅ」「うみゅう、どうでもいいにゃ」「ふぎゃあ!」「ねこみみむしゅめだ!ねこみみむしゅめだ!」
 一枚岩のように思えた『猫耳娘評議会』の面々は、今まで取り沙汰されなかったお互いの理想の違いを浮き彫りにされ、あちらこちらで取っ組み合いの喧嘩を始めていた。
(所詮、排他的集団は排他的人間の集まりだって母さんが言ってたけど、本当だな)
「お、おのれ!小娘!なんてことをしやがる!しかも、貴重な符を全部吹き飛ばしやがって!」
 司会者はショートパンツから覗く両足が活発そうな猫耳小娘になって、可愛い鬼の形相でミーナを睨みつけていた。
(そんなに貴重なら、全部広げなきゃいいのに)
 ミーナは逆恨みに近い言いがかりにげんなりした。
「だが、その魔法の力。使えるぞ!使えるよ!あたいの僕にしてあげるわ!光栄に思うのね!」
 司会者は猫のような跳躍を見せてミーナに襲い掛かってきた。しかし、その爪がミーナに届くことは無かった。リリーによって途中で叩き落とされたのであった。
「あたしを差し置いて、なに勝手にストーリー展開してるのよ!ゲストキャラの癖に!って、普通、ゲストキャラがストーリーを展開させるんだよ、リリー」
 ウッちゃんの通訳付きでどてらの魔法少女、リリーが雷球のダメージから回復して話に復帰してきた。地面に叩きつけた司会者を恒例の足蹴にしている。今回は符による変身であるから、生半可では変身は解けず、司会者は延々と蹴られ続けることになった。
 ひとしきり蹴りまくって原形を留めないタキシードを着た司会者に戻った頃には、司会者自身も原形を留めていなかった。
「一応、結果的には助けられたみたいだし、ありがとう。さすがは正義の魔法少女だね。大活躍だ」
 ミーナはとりあえずお礼を言っておいた。別に助けられなくてもどうって事は無かったが。
「とって付けたように言わないでよ。わたしが主人公なのよ。そこのところを忘れないで。……あくまで主人公なんだね、リリー」
 呆れた口調でウッちゃんは気合も入れずにリリーの代弁をした。当然、その報いとして頭を叩かれたのは書くまでも無い。
「もう、痛いじゃないか……『!』が抜けている?わ、わかったよ、真面目にやるよ……ほ、ホントにそれ言うの?うう、恥ずかしいなあ」
 ウッちゃんは言いたくなさそうだが、有無も言わさぬ迫力でリリーが睨んでいたので、仕方なく代弁を始めた。
「ここで遭ったが、百年目!あたしの栄光の歴史に泥を塗りつづけたラスカル・ミーナ!今日が年貢の納め時!今日納めないと、明日からは追徴課税されるわよ!いざ、尋常に勝負!……僕じゃないからね、リリーだからね!」
 尋常ならざる勝負を申し込んだリリーがウッちゃんを脇に押しやってミーナの前に立とうとしたが、その間に何者かが立ちはだかった。
「ミーナお姉ちゃんを倒す前に、まずはあたしを倒していきなさい」
「なんなのこの子は?って……もしかして君は銀鱗か?」
 芽衣美と混じった銀鱗の波長を感じてウッちゃんは尋ねた。
「久しぶりだね、ウッテンバーガーハイト。でも、僕は銀鱗であって、銀鱗でない♪」猫耳娘の芽衣美は少年のような声で歌い、続けて少女のような声で、「芽衣美のようで、芽衣美でない♪」と歌った。
「♪それは誰かと尋ねたら?」
 ウッちゃんがノリよく、合いの手を入れた。
「暗黒魔法少女、ラスカル☆ミーナ様の一の使い魔!究極可憐の猫耳娘、マイティー・メイ!ただいまここに生誕!」
 猫耳娘、メイはノリノリでポーズまでつけて名乗った。さすがに芽衣美の経験が生きていて、きっちり様になっている。
「ごほごほ!」
 リリーは話を勝手に進めるなと抗議の咳をした。
「うるさい!つなぎが単なる・のあなたが、☆のミーナお姉ちゃんに体調万全でも勝てるはずないじゃない。大人しく家で寝てなさい!」
「ごほ!」
 メイの台詞に頭に血が昇って氷嚢の氷が一気に溶けて蒸発しそうなリリーがバトンを振り上げた。
「隙だらけよ!」
 メイはミッキー○ークの1万倍は威力のあるネコパンチでリリーを地面に転がした。
(おーい、腐っても魔法少女なんだから、一撃で屠るなよ)
 呆れるミーナを他所に、ピンクのどてらなどで着膨れしているので、丸い玉になって転がるリリー。猫がいたら、思わずじゃれたくなるような転がりっぷりで、そして、そこには大量の猫耳娘がいた。
(あーあ、もみくちゃにされてる……)
 一斉に猫耳娘が本能の赴くままに玉にじゃれる。引っかく噛むは当たり前。メイの一撃で気絶しているのだろう、されるがままにリリー玉は公園を右に左に転がる転がる転がる……あ、噴水に落ちた。 
「リ、リリー!」
 水に落ちて、やっと猫耳娘達が近寄らなくなり、ウッちゃんが駆け寄ることが出来たがリリーは噴水の池に浮かんだまま動かない。微かに指が痙攣しているのがかろうじて生きていることを証明していた。
「銀……いや、メイ!何するんだ!反則だぞ!」
「反則?悪の魔法少女の使い魔のうちにそんな台詞が通用すると思うなんて、めでたいやつ」
「くっ。……今日のところは『猫耳娘評議会』を壊滅させただけで引いてやるが、次があると思うなよ!今度は体調万全のリリーがお前をけちゃんけちょんにするからな!憶えておけよ!リリーが全力出せば、お前なんか、お前なんか……」
「それだったら、かっこつけてないで早く出せば?」
 蔑むような視線を向けてメイはウッちゃんに言い放った。
「うう、うう、お、お前なんか嫌いだー!」
 ウッちゃんは泣きながらリリーを水から引き上げて引きずりながら茂みの中へと消えていった。茂みに消えた後にものすごい音と悲鳴が聞こえたが、その茂みの先が崖になっていたとことと多分、関係あるだろう。
(もしかして、リリーって僕より不幸かも……)
 ミーナは毎回出てきては何しにきたのかわからずに退場するリリーにかなり同情した。
「やったね、ミーナお姉ちゃん。今日も大勝利!」
「だから、勝ったら駄目なんだって」
「うん、知ってる。だけど、手抜きしたらもっとひどいんでしょ?」
「……そうだけど」
「あたしに負けるぐらいだもん、勝負するまでも無いよ」
「うーん、確かにそうなんだけど、まあ、仕方ないか。それじゃあ、銀鱗。融合解除」
「……」
「?融合解除だよ?」
「あははははは、それが何だか、出来ないみたいなの。おかしいね」
「なにぃ!」
「うーん、どうも、融合途中に雷球の直撃を受けたせいでこんがらがってしまったみたいなの」
「何で、そんなことになるんだよ!」
「あらあら、大変ねえ」
 大気が乱れて色を持ち、人の形をとって琉璃香が現れた。
「か、…琉璃香さん!」
「ちょっと心配で見に来たんだけど、すごいことになってるわね」
「ど、どうしよう?琉璃香さん、何とかできない?」
「うーん、方法は二つあるわよ。一つは銀鱗の存在を消してしまうこと。契約者のあなたなら簡単に出来るわね」
「そ、それって、銀鱗を殺せっていってることじゃないか!」
 ミーナはあまりにもとんでもない解決策に声を裏返して抗議した。メイの顔色も青ざめている。
「それがいやなら、逆でもいいのよ、芽衣美ちゃんを消す。手間だけど、やってやれないことは無いでしょう」
「そ、そんなの出来るわけないだろ!!」
 更にミーナは声を荒げた。メイの顔色は蒼白である。
「それじゃあ、もう一つはラスカル☆ミーナがいなくなること」
「僕に死ねって?」
 行き着くところまで行き着いた怒りで恐ろしいぐらいミーナの声は平静だった。
「違うわよ。契約者としての命令が二人を融合させているんだから、その契約者、ラスカル☆ミーナがいなくなれば融合は解けるわ。契約者はラスカル☆ミーナであって、皆瀬和久ではないでしょう?」
「じゃあ、僕が死ぬか男に戻るまで、このまま?」
「まあ、そう言うことになるわね」
「ああ、ごめん。芽衣美ちゃん、銀鱗」
「別に気にしないで、ミーナお姉ちゃん。こんな経験滅多に出来ないから……」
『気にしないでください。ご主人様。あれが最善の策だったと思います』
「ありがとう二人とも」
『どうやら、芽衣美ちゃんのほうの支配力が強いようなので、僕は何かあるまで、寝てますね。用があったら起こしてください』
「うん、ごめんね」
『僕はネコですから寝るのは得意なんですよ、おやすみなさい』
 メイの中から銀鱗の気配が消えた。
「でも、ネコ耳と尻尾は消えないんだね。どうしよう?」
 さすがの芽衣美もこのまま生活するのは抵抗があるらしく、かなり不安そうに自分の猫耳を軽くつまんだ。
「それは魔法で消すことが出来るから安心して。しっかり施術すれば一週間ぐらい、簡易でも2、3日ぐらいは効果があるから、ちょくちょく会えれば問題ないと思うよ。家も近所だし」
「……ミーナお姉ちゃん。あたし、来月、お父さんの転勤でアメリカに行くことになっているんだけど……」
「ええ!」
「それはまた、遠いわね。言っておきますけど、週一でアメリカ往復するだけの余裕はうちには無いわよ」
「わ、わかってるよ!でも、どうしよう?」
「まあ、正直に事情を話して芽衣美ちゃんのご両親に納得していただくしかないわよね」
「はあ、そうだよね。それしかないよね。それじゃあ、とりあえず、この姿のままと言うわけにはいかないから、どこかで悪いことでもしてくるよ」
 ミーナは芽衣美の両親にこのことを説明しなければならないことに加え、悪いことをしなければならないという憂鬱さに、何か悪事を考えなければならない鬱陶しさも加味されて、かなり陰鬱な気分にさせられた。
「あら、そんなことしなくていいじゃない」
「なんで?今回、悪いことなんかしてないけど……」
「芽衣美ちゃんの人生を台無しにするかもしれないような事で充分お釣りが来るわよ」
 琉璃香の放った痛恨の一撃のもとにミーナはその場に崩れ落ちた。
(確かに、そうだった)

「そんなに緊張しないでよ。お母さん、結構話のわかる人だから。お母さんさえ納得できたら、お父さんの説得も手伝ってくれるって」
 美奈子は芽衣美に励まされてチャイムを押した。軽やかな電子音が鳴り、美奈子の心臓は鼓動が連続音になるのではないかと思うほど早く脈打っていた。
「はあい、どちらさまで?」
 ちょっと間延びしたような声が響いた。
「え、あ、その、わたし、白瀬美奈子といいます。今日はお嬢さんを、その、あの……」
「あ、わざわざ、送っていただいたんですか?ありがとうございます」
 そう言って、玄関の扉が開かれた。優しそうな声の感じにぴったりのおっとりした感じのする女性が姿をあらわした。
「は、はじめまして、わ、わたし、白瀬美奈子です」
「はじめまして、芽衣美の母の神埼沙織です。今日は娘がお宅に押しかけまして、申し訳ありませんでした。さぞ、ご迷惑だったでしょう?」
「いえ、そんなことはありません。とっても礼儀正しくて、明るくていい子でした」
「あらあら、ネコの格好させたら、本当にネコを被っていたのね、あの子」
「お母さん、ただいま。でも、それひどいよ」
 美奈子の後ろからひょっこりと芽衣美が顔を出した。
「お帰りなさい。でも、本当のことよ。いつもはお転婆さんなのに。……あら、カチューシャと尻尾飾り、変えたの?質感が本物ぽくなってるわよ」
「わ、わかるんですか?」
「こう見えてもその筋では名の知れたものですから」
 沙織がコロコロと笑った。
「なんたって、コスプレ歴今年でさ……※☆▲〒○」
「芽衣美ちゃん。口裂け女になりたい?」
 目以外は笑顔で沙織は芽衣美の口に入れた指を左右にゆっくり広げた。
「ふぉふぇんふぁふぁぁい(ごめんなさーい)」
「よろしい」
 沙織は芽衣美の口から指を引き抜いた。美奈子はどこかで見たような光景だとデジャブーに襲われていた。
「さあ、玄関先でなんですし、お上がりくださいな」
 美奈子は居間に通されて、ソファーにかちこちに緊張して座っていた。まるで結婚の許しを貰いにきた彼氏のように。
「それで、何かお話があるのでしょう?」
 お茶をテーブルに置いて沙織は美奈子と向き合う形で腰をおろした。
「は、はい!お、お嬢さんを……芽衣美ちゃんを僕にください!」
 美奈子の台詞に芽衣美はテーブルに突っ伏した。
「み、美奈子お姉ちゃーん。それじゃあ、お嫁さんを貰いにきた人みたいだよ」
「あ、あれ?えーと……その……」
「ああ!もう!あたしが説明する!お母さん、これ読んで!」
 しどろもどろの美奈子を脇に押しのけて芽衣美は少年少女文庫からプリントアウトしたラスカル☆ミーナの第1話から3話を沙織に渡した。
「……最近は便利なものがあるんですね。大体の事情はわかりました。それでどうするつもりです?」
 沙織は読み終わって、少し困った顔で美奈子に訊いた。
「母と相談したのですが、もし許していただけるのなら、わたしの家に下宿させたいのですけど……」
「たしかに、事情を考えるとそれが一番よいですわね。それで、芽衣美はどうしたいの?」
「あたしは、お母さんとお父さんがいいって言うなら、美奈子お姉ちゃんとこに行こうと思うの」
「そうでしょうね。転校するのを嫌がっていたものね」
「お、お母さん!」
「いいの、いいの。美奈子さんのところがよろしくて、芽衣美がいいって言うのならそれでいいわよ」
「そ、そんなあっさりと」
「もっと、抵抗して欲しい?」
「いえ、いいです」
「そうでしょう?それに、読ませていただいた第3話にも、そう書いてありましたもの……だけど!」
 沙織は最後の一言だけ語気を強くしたので、美奈子と芽衣美は緊張した。
「夏のイベントには二人とも参加すること。これが私の条件です」
 沙織は二人の緊張を解くようににっこり微笑んでそう言った。
「ほっ。それだけで……って、わたしもですか?!」
「一目見たときから、いけると思ったの。美奈子ちゃんって創作意欲をそそるわ」
「お母さんも?あたしも!美奈子お姉ちゃん、絶対、イケてるよね」
「ふふふ、燃えるわ!会場を萌え萌えにするわよ!」
「おお!」
 拳を振り上げて気合を入れる親娘に圧倒されて美奈子は乾いた笑いを浮かべるしかなかった。
「それで、お父さんにはなんて言うの?」
 盛り上がったところで、忘れていた最後の関門を芽衣美が口にした。
「芽衣美が残りたいと言うから残しますって言うだけよ。本当の事なんか言ったら、あの人、会社行かなくなるわよ。ネコ耳好きだから」
 美奈子は芽衣美の父親が『猫耳娘評議会』に入っていない事を願うだけであった。

 リリーはパステルカラーの百花繚乱春爛漫のお花畑を歩いていた。
「ここ、どこだろう?」
 遠くは霞がかっており、何処までこの花畑が続いているかはわからないし、今どっちを向いて歩いているかすらも怪しい。しかし、リリーに不安はなかった。
「……り、……ゆり」
 遠くの方で彼女を呼ぶ声を聞いた。聞き覚えのある懐かしい声である。
「おばあちゃん!それにヨシツネ!」
 呼ぶ声に近づくと、去年まで飼っていた犬を連れた、小さいときに自分の事を可愛がってくれた祖母の姿が浮かび上がった。
「なんで、ここに?」
 彼女はその人影に更に近づこうとすると首根っこを引っつかまれて後ろに引き戻された。
「?!」
「まったく!世話の焼ける子ね!幽霊魔法少女ファントム・リリーなんて作者の没ネタよ!あなたはまだ死んじゃ駄目なの!」
「ま、真琴お姉さま!」
 リリーは彼女の首根っこを掴んで引き戻した女性の名前を叫んで飛び起きた。
「ゆ、由利ちゃん!」
 蒲団を跳ね上げ飛び起きた彼女に白いぬいぐるみ犬のウッちゃんが涙目で抱きついてきた。
「いて、いててて……ウッちゃん、痛いって!」
 それをきっかけに全身から襲い来る打撲の痛みに由利は顔を歪めた。
「あ、ご、ごめん。でも、よかった!死んじゃうのかと思ったよ。よかった……」
 ウッちゃんは鼻をすすりながら、ひたすら「よかった」を繰り返していた。
「真琴お姉さまは?」
「え?真琴様は来てないけど……どうかしたの?」
「そうなんだ……うん、それならいいの。心配かけてごめんね」
 由利はちょっと複雑な表情をしてから優しく微笑んでウッちゃんの頭を撫でてあげた。
「ゆ、由利ちゃん!まだ熱があるの?打ち所が悪かった?雑菌が脳に入ったの?た、大変だ!何とかしなきゃ!」
「ウッちゃん!あたしを何だと思ってるの!」
 慌てふためくウッちゃんに由利は怒号を浴びせて夜は静かに更けていった。

今度は本当につづく



まだ決めかねているのに次回予告!
にっこり微笑み追加をせがむ。たまにはドジをするけれど。それも愛嬌。女は度胸。
可愛いフリルでお客を魅了。日常に溶け込む非日常のコスチューム。
次回!第4話 だれでも ウェートレス!(仮)
「今からお作りいたしますので、だいぶんとお時間がかかりますが、よろしいでしょうか?」
気長に待っていてくださいね。

あとがき
 何は無くとも、今回も長い乱文を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
 第3話は楽しんでいただけたでしょうか?回を重ねるごとに長くなっていて、文章は益々混沌として、心苦しい限りです。それと、予告とタイトルが変わってしまいまして申し訳ありませんでした。
 どうでもよいことですが、今回、生まれて初めて耳まで真っ赤にして文章を書きました。うう、恥ずかしかった。




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